すてきな理由で介護施設入所を決めたお客様のお話
2018年から福島県で高齢者施設の入居紹介をしています。その中で、忘れがたいお客様のお話をお伝えします。ご参考にしていただければと思います。
5年ほど前ですが、とあるご夫婦から施設の入居相談を受けました。
しだれ桜で有名な三春町というところで、温泉宿を経営している方たちでした。
私が打合せのために伺った日は、平日の午前中でしたが、温泉利用者のための駐車場は県外ナンバーの車で満車。
温泉宿の奥にあるご自宅は、ほぼ『お城』と呼べるくらいの立派な建物でした。
実際にそのご夫婦にお会いすると、まだ70歳くらいの健康な状態で、とても施設を必要とする状態には見えませんでした。
私が『何故、その状態で県外の施設に早く入りたいのか?』尋ねると『最近、子供たちに温泉の経営権を譲りました。私たちがいると経営の邪魔になってしまう可能性があるので急いで施設に入りたい』
とのことでした。
ガン治療で全国的に有名な温泉らしく、40年前に建築資材の採掘中に偶然掘りあてたとのこと。
利用者の方々から届く感謝の手紙も読ませてもらいました。
ご主人はかつて長者番付に名前が載ったこともあるそうです。
多くの孫たちに囲まれ、亡くなるまでそこにいることもできたはずですが、
結局、私と出会って数日後には、宮城県仙台市の施設への入居をお決めになりました。
『人生は全て借りたもの』というニュアンスの言葉があったかと思います。
彼らもまた、手にした富を『借りたもの』と捉えていたのかもしれません。
人生の終盤に、自らに厳しい決断をされる潔さに感服すると同時に、
そのような謙虚な利他の心を持っているからこそ、そこまでの成功に至れたのだろうとも感じました。