空き家バンクで不動産を購入するときの2つの注意点

施設に入られた方のご兄弟から不動産売却の相談を受けました。

1年前に施設に入られた方が住んでいた物件で、所有者もその方です。

私自身もそのご自宅で打合せを行ったことがあるためその物件のことは特によく覚えていました。

建物こそ築30年未満でまだまだ使える状態ではあったものの、物件まで至る道路がとても狭く

さらに勾配が急な坂道になっていました。

生活が大変なのでとても売るのは大変

と私は感じていましたが、1年前のご兄弟さんは『空き家バンクに登録してますから』とどこか安心した様子でした。

その1年後に改めて売却の相談を受け、いろいろと調べるプロセスで大変なことに気付いたため、

空き家バンクから不動産を買う時に注意すべき点を二つに絞ってお伝えします。

宅建業者を通していないので調査されていない場合がある

随分と甘い表現をしてしまっていますが、少なくともこちらの物件の空き家バンクへの登録情報に関しては私が調査したところ

実際には水道が通っていましたが、空き家バンクの情報上は『井戸水』と記載されていました。

この事実に関しては現実の方が井戸水ではなく上水道が使えるのでまだマシではあります。

宅建業者の私は不動産の査定を受けた際には必ず、公図や登記簿謄本といった権利関係の情報をお金を払って調べます。

その上で、道路、上下水道などのインフラ、都市計画法、建築基準法などのその土地に関わる法律や条例などについて調べます。

最近ではネット上に情報をまとめた自治体もありますが、そうでないところは基本的に窓口に出向いて関係各課をまわり

買主にとって不利になる情報の精査を行います。

こちらの物件の細い急こう配の前面道路は私道でした。私道なので自治体で管理はしていません。

つまり、道路が壊れれば自分たちで直す必要があります。

更に、私道でありながら売却物件の所有者は私道部分の権利を持っていませんでした。

このことに関するデメリットは私道の所有者が『車両通行禁止』『掘削禁止』と言われた場合に金銭を支払いながら

使うこともあり得るということです。※私道について詳しく知りたい方はこちらのサイトを参考になさってみてください。

とはいえ、建物自体は建っているため、当時の建築確認申請書上のみなし道路の許可をおろした窓口に出向き

この辺のところを詳しく聞きましたが、私道に関してはあくまでも民民間の話し合いで決まるため、トラブルの仲裁には入らないそうです。

所有者さんから不動産に関して任されているご兄弟の方もその辺をどうするべきか理解していませんでした。

空き家バンクとは

地域の空き家等の流通・利活用等に関するモデル事業

印刷用ページ

本格的な人口減少社会を迎える中、今後とも我が国が経済成長を実現するためには、各分野において生産性の向上を図ることが必要です。空き家が増え続ける中、不動産分野における生産性の向上を図り、我が国の経済成長に貢献するためには、空き家・空き地等の不動産ストックについて、需給のミスマッチの解消や新たな需要の創出等により、その流動性を高め、有効活用を推進する必要があります。

国土交通省では、地域の空き家・空き地等の利活用に取り組む地方公共団体と宅地建物取引業者などが連携した団体を募集・選定し、事例の分析や周知等を通じて、空き家・空き地等の流通促進を図ることを目的として、平成29年度から令和2年度の4か年で本事業を実施しております。

国交省HP

空き家が増え続けているため有効活用を促進することを目的としています。

その側面は悪くないと思いますが、各自治体、特に地方都市が予算を使って空き家バンクを動かす理由は

定住者を増やす

ということです。どこの空き家バンクも助成金などを絡めながら人口を増やすために使っています。

ターゲットは都会暮らしの人たちです。

そもそも自治体が運営しているので、空き家バンクに対する信頼感はあると思います。

私は今回の不動産調査の中で行政の窓口の方に聞きました。

Q『空き家バンク掲載前に誰が物件の調査をしてますか?』

A『売主の自己申告です』

少なくとも今回の売主さんもそのご兄弟も宅建業者ではありません。

権利、法律、インフラ、何も調べてもいなければ正しい情報を提供する義務もありません。

私は大変ショックを受けました。買った不動産に知り得なかったデメリットがあった場合に誰がどう責任を取るのか、検討もつきませんでした。

また、当然ながらこのような前提で走っている空き家バンク制度であるためトラブルが起きてきた場所では

しっかりと間に宅建業者を入れる自治体の空き家バンクもあるそうです。

また、宅建業者に売却を依頼すると空き家バンクに登録できない自治体もあるそうです。

空き家バンクは自治体によって運用方法が異なっています。

相場とかけ離れて異常に高く掲載されている場合がある

ご兄弟さんが自治体の空き家バンクに登録していたその物件の提示価格は

しっかりとお金と時間を掛けて出した私の査定額の約10倍でした。

そのことを自治体の窓口の方に聞きました。

Q『不動産価格についてアドバイスなどはしないのでしょうか?高すぎる気がしますが?』

A『都会の方から見て安いと感じてもらえればいいという値付けをしているケースが多いかもしれません』

 

逆に腑に落ちました。私は東京で分譲マンションの建設会社で働いていたことがあります。

私が東京にいたのは20年近くも前の話ですが、最近の分譲マンション相場を見るととてつもない価格になっています。

それと比べれば確かに地方の、しかも一軒家は安く感じるのかもしれません。

しかし、仮に私の知り合いや、こちらの記事を読んでいるあなたが相場よりも

遥かに高い値段で家を購入するようなことがあれば

とても悲しいです。

一体何のために税金を投入して空き家バンクなどという制度を設けているのか…

空き家バンクから家を買う場合のポイント

自分で調査を行う

ということに尽きます。基本的に空き家バンクは情報掲載だけする場所であるため

やりとりは売主さんと直接行うことになります。

売主さんの性質や不動産の知識は問われていませんので、その情報が真実であるか否かはいくら直接やりとりを行っても

間違ってしまっていることはあり得ます。

権利調査

現地調査

役所調査

まともな宅建業者は日々行っていることです。

いずれ当サイトでまとめますがそれぞれ参考サイトのリンクを貼っておきます。

固定資産税納税通知書を見せてもらう

宅建業者は基本的に所有者さんのところに毎年届く固定資産税納税通知書に記載されている固定資産税評価額を確認します。

それを確認できるのでしたら確認してください。売主さんから固定資産税納税通知書のコピーをもらうか、写メを撮ってください。

その評価額は相場の0.7倍などと言われています。

土地の固定資産税評価額÷0.7=相場

100万円÷0.7=約142万円

建物は築年数が古ければ基本的に低く設定されており、空き家バンクに登録されている物件は古いものが多いです。

しかし、リフォームなどを行った分が反映されていないこともあり得るため、固定資産税評価額が低い場合でも

『これには〇〇万円かかったんだ!』と売主さんから言われることもありますのでご注意ください。

不動産の価格に決まりはありません。だからこそ自由に売主さんが価格を設定していますし、どの金額であったとしても

買うか否かを決めるのはあなたです。

しかし、買った後に文句を言える場所も少ないため、後々金額について後悔したくないのであれば

固定資産税評価額を確認し、0.7で割ってみてください。

その価格と空き家バンクの売値を比較して、納得できる金額か否かを見ていただきたいです。

まとめ

空き家バンクを経由して、もちろん適正に安全に買主がなっとくの上成立している取引も多数あろうことかと思います。

取引成立時に仲介手数料を支払わなくて済むというメリットもあります。

しかし、空き家バンクを行政が運営しているという事実に甘えることなく

事前にしっかりと調査をご自身で行い、購入後のリスクを踏まえた上で検討されることをおすすめします。

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